蜂蜜は、そのままでは旨味が濃厚であると同時に糖分が高く、夏季でも腐敗することがないいわば保存食とも言われています。つまり、いたみにくいということは発酵しにくいということです。そんな蜂蜜を安全且つ美味しく発酵させることは、発酵に携わる者としての夢でした。蜂蜜をたくさんの水で薄めてしまえば、発酵はしますが、蜂蜜の味は損なわれてしまいます。
できる限り蜂蜜の味を残すように発酵させることが私の目標です。蜂蜜に酢をブレンドすると、甘酢になります。しかし、私が目指す味は酸っぱい蜂蜜の味です。酸味はあっても蜂蜜の味がすることを目指しています。
じっくりと時間をかけて、そこで菌が働いてくれるようになるまで1年近くひたすら待ちます。
ところがゆっくりと発酵を進めていると、悪い菌の侵入を許してしまうことがあります。目標とする同じ菌がたくさん増えるまでは、空気中に存在する他の菌も蜂蜜の中に入ってしまうことがあるのです。菌は、寂しがり屋さんだと思うと理解しやすいかもしれません。仲間が少ないと色々な菌を呼び寄せてしまいます。しかし恥ずかしがり屋さんでもある菌は、一つの菌の仲間がたくさんいるところには、他の種類の菌は入りにくくなります。蜂蜜の発酵が難しいところは、目標とする菌の仲間が少なくて寂しがっている間に、悪い菌を入れないように、しかもその期間をじっくりと1年近くかけて仲間を増やす発酵をさせるところにあります。悪い菌が入ってしまうと嫌な香りになってしまいます。そうすると、せっかく蜂蜜を発酵させて酢を作っても、嫌な香りのする酢になってしまいます。
最初は、なかなか上手くいきませんでした。1回の発酵テストが1年近くもかかり、何回もテストを重ねていると、やがて本当に蜂蜜から綺麗な香りのする酢ができることなんかあるのだろうか?と自信を無くしました。もう蜂蜜から綺麗な香りのする酢を作るのはあきらめようとした頃です。岐阜の本社工場のある実験室で発酵テストをするのではなく、標高700メートル以上ある長野県のアルプス工場(写真)でテストをしてみましょうという意見があり、最後のテスト発酵だと言って、チャレンジしてみたところ、一発で成功いたしました。そして同じ種類の菌をたくさん増やすことに成功し、今では岐阜県の本社工場でも綺麗な香りと味を特長とする蜂蜜の酢を造ることができるようになったのです。
希少性の高い酢
菩提樹蜂蜜酢は、発酵に半年から1年近くの時間がかかるという事と、北海道でもとても貴重な蜂蜜とされていて原料そのものが極めて少ないという事もあり、量産ができません。そのため、特別な時のみ販売をしております。実際に、原料の菩提樹蜂蜜が入手できず、1年以上販売ができなかった年もあります。
菩提樹蜂蜜が酢に発酵することで、菩提樹蜂蜜の持つフルーツを思わせるような独特の蜂蜜の香りが一層強調されるようになります。
おすすめの飲み方や楽しみ方
また、そのままトーストに塗ってお召し上がりいただくこともオススメです。優しい甘酸っぱさを楽しみながらトーストをいただきますと、唾液がたくさん出て参ります。すると飲み物を口に入れなくともパンの味を楽しむことができるようになります。いわば酸っぱい味のする蜂蜜としてお使いいただく事もオススメです。お肉を焼いていただき、フライパンから取り出す時に少量の菩提樹蜂蜜の酢をかけて絡めていただきますと爽やかな甘酸っぱい味わいの焼肉をお召し上がりいただけます。